2015年08月19日

マイクロサーマル運用雑考

 マイクロサーマルを振り回してみて気付いた点をいくつか。


●モードが多すぎる

 一見お得な「ブラックホット‐ホワイトホット-バーチャルNV‐カラー」の各モードですが、
実際に戦闘状態で運用してみるとモードの切り替えに時間を取られます。
アパッチのFLIR映像をYoutubeで検索してみるとわかると思うのですが、
茂みなどに隠れている熱源を探知する場合BHとWHをコロコロ切り替えて
人の形を浮き上がらせ標的を判別する作業が重要です。
あまりモードが多いとこの作業に時間がかかり、チャンスを逃す確率の方が大きくなるのですね。
あと以前のエントリーでも書きましたが、モード変更の過程で必ず
光量がかなり多いカラーに切り替えなければならないので、ここで発見される確率も高いです。

 発熱状態の監視とか熱中症の予防みたいな朗らかな用途ではモードが多いと助かりますが、
戦闘状態ではモードの数はいらないから単価を下げてほしいと感じました。


●IFFをどうするか


 かなりリアル寄りだと思ったゲーム「コール・オブ・デューティ4」の
AC-130航空支援シーンですが、
0:15とか4:00の「ストロボは狙うな」という演出に疑問を持っていました。

NVは可視光に近い光を拾うので、ストロボから拾える赤外を抽出すれば見えます。
サーマルは熱が出す光を拾うので、見えるためにはストロボが熱くなければいけません。
カメラのストロボを焚いた時、熱かった覚えがあるでしょうか?
もしサーマル対応のストロボを焚くのであれば、70年くらい前のカメラみたいに
マグネシウムを断続的に燃やすとか、頭の上で爆竹を燃やすとかしなければならないはずです。

 実際に試してみました。
マイクロサーマル運用雑考
もっと小さいのも出てますが、単3で動くので重宝しているMS2000です。

NVで見てみると・・・、まぁ光ってますよね。
(ちなみにテレビのリモコンもNVで見るとかなり強烈に光るので、IFFに使えます。)
マイクロサーマル運用雑考マイクロサーマル運用雑考
ではサーマルで見てみると・・・
光っても温度の変化がないので、貝のように沈黙しています。
むしろIRフィルターが冷えているので黒くなってます。
光っているように見えるのは撮影者の体温を反射しているため。

マイクロサーマル運用雑考
次にリフレクター。

IRを焚いてNVで見ると、IRがきれいに反射して戻ってきています。
(旧日本軍は終戦間近、ウミホタルの発光酵素を集めてIFFを作ろうとしていたらしいです。
蓄光IFFの元祖ともいえる思想ですが、ウミホタルを小学生に集めさせていたのが泣かす。)
マイクロサーマル運用雑考マイクロサーマル運用雑考マイクロサーマル運用雑考
ではサーマルで見てみましょう。
周囲の物体と同じような温度なので背景に溶け込んでしまっています。
離れて見てしまうと、もうどこにあるのかわかりません。

もうお分かりでしょうが、サーマルはとってもIFFがしにくい機材なんです。
つまり運用側が撃つか撃たないかの判断は、装備や身なりなどの輪郭情報や
管制や部隊間通信でのコミュニケーションに頼る所が大きいのです。
ということで、サバゲで多い混戦状態では使い物になりません

膠着状態に入って静かにポジションを変える場合や敵背後に迂回する運動を取る場合に
ルートや次のポイントの索敵をするような用途では非常に有効だと思われます。


●ズームがない

 輪郭からの情報で撃つか撃たないかの判断をしなければならない以上、
対象の細かいディテールをつかむのは非常に大切な事です。
実戦のFLIRを観ていても、かなり頻繁に画面を拡大して対象の選別をしているようです。
しかしマイクロサーマルにはズームがなく、固定倍率です。

マイクロサーマル運用雑考マイクロサーマル運用雑考
空地の自販機と駐車場(カラー) / 林+道路+高架橋(BH)

マイクロサーマル運用雑考マイクロサーマル運用雑考
林(WH) / 畑の作物(VNV)

森や草原などの比較的温度が一様な環境では、9hzではノイズの補正が効かずに
かなりザラついた画面となりました。
川原などの場所ごとの温度変化が激しい場所では高温の石が邪魔になり、
アンブッシュしている人間を見つけるのは至難の業です。
適切なチャンスでズームを使えないというのはちょっと手痛いですね。


●総評
 システムの仕様上、得意な環境と不得意な環境があること
またズームが効かないという機構的な理由から、マイクロサーマルはNVの補完
または監視ツール的な位置づけで運用するのが吉と思います。
センサーとしての面白さは充分ですが、単体で運用できるような代物ではないです。


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Posted by はまさん  at 00:54 │Comments(0)光りモノ(光学)

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